2006年09月16日

ワイルド・スワン

ワイルド・スワン〈中〉 矜恃を持って動乱の現代中国を生きた3代の女性についてのノンフィクション。
移動中の読書用に購入したのですが、これを持って中国に行くわけには行きません。
上中下3冊の文庫本で合計1,000ページにもなろうとする大書なのですが、面白かったため2晩で読了してしまいました。

著者の祖母は清朝末期の軍閥高官の妾となり著者の母を生み、周囲の蔑視の中で育てます。
母は日本の敗戦と国共内戦の動乱の中、共産党員となり共産党員幹部の若者と結婚し、著者が生まれます。
共産党が中国全土を統一した後も、大躍進政策による饑餓や文化大革命、下放といった激動に一家は巻き込まれます。
高潔な理想主義者であった父や部下思いで有能な官僚であった母は吊し上げられて「自己批判」させられるのです。
そうした逆境の中で、挫けずに生きている著者一家の清々しさには感銘を受けます。

学生時代に中国現代史の講義を受講していたのですが、指定された副読本の中で強く印象に残った箇所があります。
共産党幹部の子弟かそうでないかは外観で分かるそうです。
幹部の子弟は幼児期より食料に恵まれているため発育が良く、そうでない子弟と比べると身長や体格が明らかに違うとのこと。
今ほど飽食していませんが、食事に困った経験がない現代日本で育った学生にとっては、感慨深かったです。

タイトルの「ワイルド・スワン(野生の白鳥)」は、母、著者の姉、著者の幼名に共通の文字である「鴻」を元にしています。

http://www.fks-wo.thr.mlit.go.jp/swan/05_column/20020222/20020222_02.html
「鴻」とい字は、鳥偏に、水を表わす「さんずい」と大きいという意味のある「工」で「大きい水鳥」すなわちハクチョウを意味しています。

地元では白鳥は寒い冬に渡来してきます。最近は渡りのコースになったらしく、近所の水田で何十羽と休んでいる姿を良く見かけます。
純白の姿は遠目では気高く美しいのですが、餌付けをしている観光地で見られる、餌を争って鴨をいじめている様子を見ると、幻滅します。
しかし野生の白鳥は貪欲にたくましく懸命に生きているだけです。勝手に幻滅するのはお門違いというものです。

中国人と仕事をする際には、過剰な自己アピールや理解しがたい尊大さに辟易することがあります。
しかし、彼ら彼女らにも本書のような試練があったのかと想像すると、その背景が理解できるように思います。

投稿者 isi : 2006年09月16日 02:25
コメント

 この本、私も二日とはいわず一週間くらいかけてですが読みました。古い中国と新しい中国の過渡期を覗けたようで興味深かったです。続編(?)「マオ」も読んでみたいけど、なかなか手がつかない。
 中国の物語を読んでいたときにも感じてましたが、彼の地には妬みというか、他者の足を引っ張るとでもいうような文化が根ざしているように思えます。「大革命」という言葉は使っていますが、この本を含む各種情報から類推するにそういった類の感情や文化に根ざした下克上であり、上位者へ仕掛けたアップセットというのが正体だったのかなあ。マオはそんな民衆を手の上で転がし面白がっていたのでしょうかね。何年か前に福岡で起きた家族同士を殺害させ合う猟期殺人事件がありましたが、あのニュースを詳しく知るに付けマオとこの本を思い出しました。狂気とサディズムつながり...?
 この本を持ち込めないという件に関してですが、いまだに焚書坑儒なんですかね。中国によく渡航する友人がいるので、試しに持ち込んで貰おうかな。今なら古本屋に百円で売っているし(嘘)。

Posted by: 中待合い : 2006年09月20日 21:47
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?