2005年04月11日

ジーキル博士とハイド氏

ジーキル博士とハイド氏 「宝島」と並んでスティーヴンソンの文名を不朽にした名作です。
多重人格をテーマにしているため、精神分析の題材としても興味深く読めます。
世間の尊敬を集めるジーキル博士の周辺に下劣なハイド氏が出没します。
友人でもある弁護士はハイド氏の正体を探りますが、なぜかジーキル博士はハイド氏を庇います。
ハイド氏はジーキル博士の持つ恥ずべき面だけを表にしたものでした。
実はハイド氏はジーキル博士の変身した姿だったのです。
誰にでも闇の部分はあります。しかし多くの人は闇を人目に付かないところに隠しておきます。
ハイド氏という闇を具現化することによって、ジーキル博士は平衡を崩していきます。

もしこんなことがこのまま長くつづいて行くと、わたしの本性の均衡は永久に破れてしまい、やがては-自由自在に変身する力も失われて、エドワード・ハイドの性格が自分の性格となりおわって、ついにはとりかえしのつかない羽目に陥りそうな危険をわたしは、うすうす感じはじめていた。
すなわち、わたしは次第々々にわたし本来の善なる自己を喪失し、次第々々にわたしの第二の悪なる自己に合体しつつあるということだ。

人は闇を抱きながら生きていくものですが、闇は闇のままにしておかないと破滅してしまうのです。
闇を隠して生きることで、陰影が出るのでしょう。それによって人は深みを獲得するのですが、それは望んだものではないと思います。

さて、スティーヴンソンを題材とした小説として、中島敦の「光と風と夢」という作品があります。
夭折した中島敦ですが、本作は芥川賞候補になっています。
内容はポリネシアで尊敬を集めていた晩年を中心にして書かれています。スティーヴンソンと中島敦は同じ宿痾の結核に冒されており、「光と風と夢」では、作者と主人公が分離できないほど一体化しています。
晩年にはすでに文名を成していたスティーヴンソンに憧れる中島敦は、読者の深い同情を誘います。
短編「李陵」「山月記」より、ちょっと長いですが、良い作品です。

投稿者 isi : 2005年04月11日 23:12 | トラックバック
コメント

学校で性善説と性悪説とを習ったけど、実際には両方混ざり合っているんだろうね。

最近は酷い犯罪や衝動的な犯罪に巻き込まれることが多いので、子供には「悪い人には気をつけなさい。良い人だと思われる人にも気をつけなさい」と教えないといけないかも。

Posted by: 阿佐ヶ谷カルテット : 2005年04月12日 06:21

現実には、善悪で割り切れるほど単純なものではないですな。
「正義は勝つ」「悪は滅びる」なんて簡単にはいかないのが世間というものです。

子供に現実をどう教えるのかは難しいです。
誤魔化したりせず、理解できる言葉を選んで言うようにしているのですが、分かってくれているかどうか。

Posted by: isi : 2005年04月13日 00:04

その通りだよね。
最近読んだ曽野綾子の↓は、教育というか人間に対する目線が高くて面白かったです。
作家にして、しかも笹川良一がつくった財団(日本財団)の理事長をやっているので、どんな人かと思ってましたが、なかなか興味深い人のようです。

ただ一人の個性を創るために
ISBN:4569634664
235p 19cm(B6)
PHP研究所 (2004-03-05出版)

Posted by: 阿佐ヶ谷カルテット : 2005年04月13日 05:43

曾野綾子さんの書かれた文で深く同意したことがあります。
『悪いことをした死者を祀ることを許さない、というのが中国の考え方だ。しかし日本では違う。死者は死者として等しく祀るのが多くの日本人の気持ちだ。』
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/moyo/2003483/20034832.html
総理が靖国神社に参拝することについての『私の答え』だそうです。
こんなふうに概念を分にして、多くの共感を集めることができる能力を示されると、感嘆するしかないです。

Posted by: isi : 2005年04月14日 01:27

曾野綾子さんの「太郎物語」は思春期に読むのに打ってつけの示唆を与えていると思う。
80年ごろの作品だと記憶しているが、社会が変わり、若者の置かれている環境や価値観も変わった現代でも十分通じるものありと感じます。

娘を持つお父さん達にご参考まで!

Posted by: 空蝉 : 2005年04月14日 08:45

曽野綾子は結構読まれているんだね。
ご推薦いただいた本は読んでみます。

全く別件だが、こんな記事ありました。

新潟県中越地震発生後、自治体サイトは何をどう伝えたか

http://premium.nikkeibp.co.jp/e-gov/special/2005/sp050413main.shtml

Posted by: 阿佐ヶ谷カルテット : 2005年04月14日 09:19

「太郎物語」懐かしいっすね。
NHKの少年ドラマで広岡瞬(今何してんだろ?)主役でやってましたなぁ。
初めて買ったハードカバーが「太郎物語」でしたワ。
もちろん、続編も読みました。イイ作品だと思いますよ。

Posted by: さと : 2005年04月16日 15:22

太郎物語は僕も読んだことがあります。
さわやかなで頭の良い青年が過ごす高校、大学生活の話で、読後感が良かったです。
曾野綾子さんの息子さんがモデルとか。

Posted by: isi : 2005年04月19日 00:41
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