2005年03月20日

銃・病原菌・鉄

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 なぜインカ帝国が神聖ローマ帝国を滅ぼさずに、逆になったのか。
なぜアポリジニがイングランドを占領してアングロサクソンを虐待するようなことがなく、逆になったのか。
本書は、差別主義による人種間の格差という論調をあっさりと切り捨てて、論理的に持論を展開する。
作物にできる原生種の違い、家畜化できる野生動物の違い、地形の違いによる伝播効率の違いなど、分かりやすく納得できる論旨である。

さて、近代までに格差が生じた理由はよく分かった。
それでは、現在では、交通手段が発達し、作物、家畜、伝播効率の問題が解消されているのに、地域格差、民族格差、国家格差が生じているのはなぜだろうか。
筆者は、それについての回答として、近代を制したのが中国でなく、ヨーロッパであった理由を挙げて考察を述べている。
中国は政治的に統一されていたため、トップダウンで技術の発展や国外への渡航を禁止できた。
それに対して、ヨーロッパは統一されていなかったため、社会的な規制を徹底することができなかった。
むしろ、国家間で激しい競争があったため、新技術を積極的に取り入れて、社会的な改革をおこなうことで、隣国を出し抜いて生き残ることができた。
そのため、中国の近代化が遅れたのに対して、ヨーロッパはいち早く近代化を達成し、圧倒的な技術力と軍事力で世界をセイすることができたのである。

現代社会において、地域や国家で格差があるのは、これまでの資本的、技術的な蓄積にもよるが、社会制度での格差が大きい。
今後、地域や社会が経済的な幸福を追求できるかは、社会をどう作り上げていくかに掛かっているのだ。
社会が一律の専制国家では、取り返しの付かない失敗をおこなう危険性がある。
それよりも、地域を維持発展するためには、多様性があって大失敗する可能性の低い体制の方が望ましいと考える。

投稿者 isi : 2005年03月20日 23:15 | トラックバック
コメント

アメリカ大陸には欧州人が連れてくるまで馬がおらず、アステカだかインカには車輪の概念がなかったというのは有名は話だね。
この本で触れているかどうか知らないけど、砂漠で生まれた一神教(ユダヤ、キリスト、イスラム)と湿潤気候の仏教やジャングルの土着宗教との違いもあるのかな。
中国の歴史は、統一王朝と戦国時代が半分づつくらいだけど、いずれの時代も中国大陸(支那大陸?)の外に行く発想がなかったのは、中国又は東アジアの地域性なのだろうか。

Posted by: 阿佐ヶ谷カルテット : 2005年03月21日 09:26

アメリカ大陸の大型哺乳類は人類がやってきたころに絶滅した。
そのため労働力、食料としての家畜を利用することができなかった。

本書では宗教などの人文系に触れることはなく、クールに論理を構築している。
未読ならオススメ。

中国の歴代王朝で大きく版図を広げたのはモンゴル帝国があるよ。
武力偏重だったので、継続して支配できた地域は狭いけど、ロシア、東欧は支配下に置かれていたね。

Posted by: isi : 2005年03月22日 03:48

個人レベルでも、マグロの頭を食べる習慣のある漁師町の人は頭がいい、というくらいだから、生活環境は大事ってことか。
読んでみます。

Posted by: 阿佐ヶ谷カルテット : 2005年03月22日 06:13

本書では人種や地域の優劣ではなく、所与の環境によって近代までの格差が生じたとの論旨を展開しています。

面白かったです。

Posted by: isi : 2005年03月22日 20:36
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