ラフカディオ・ハーンの「怪談―不思議なことの物語と研究 」を読みました。久しぶりにエントリします。
八雲立つ 出雲八重垣
妻籠みに 八重垣作る
その八重垣を
「まんが日本昔ばなし」という子供の頃やっていたアニメ番組では、「耳なし芳一」は最後に耳を取られてお終いの、もの悲しい話でした。でもラフカディオ・ハーンの原本では後日譚がちゃんとあります。平家の亡霊に評価されるほどの名手だということで、名が売れてお金持ちになってしまいます。そんなに救いのない話ではなかったです。
中に、ものすごく美しい日本語表現があります。「ろくろ首」という短編の一節を紹介します。
美しい夜であった。空には一片の雲もなく、そよとの風もない。鋭い月光が、木立の影をくっきりと地に落として、庭に降りた露がきらきら光っている。あたりには、虫の音が、いちだんとすだくように鳴いている。夜の更けるにつれて、家の近くにある滝の音が、しだいに高まさってきた。
どうですか?すばらしいです。
でもハーンは元々英語で書いています。原本にあたってみましょう。
Kwaidan Rokuro-kubi (1904) by Lafcadio Hearn
The night was beautiful: there was no cloud in the sky; there was no wind; and the strong moonlight threw down sharp black shadows of foliage, and glittered on the dews of the garden. Shrillings of crickets and bell-insects made a musical tumult; and the sound of the neighboring cascade deepened with the night.
う~ん。アメリカで新聞記者をやっていただけあって、すっきりとした英語ですが、上のような美しい日本語にはなりません。翻訳をやった平井呈一さんがスゴイのです。
また、ネタとなった怪談は、妻であるセツさんが収集してきてハーンに聴かせてくれたものです。
怪談は大層好きでありまして、「怪談の書物は私の宝です」と云っていました。私は古本屋をそれからそれへと大分探しました。
寂しそうな夜、ランプの芯を下げて歓談を致しました。ハーンは私に物を聞くにも、その時には誠に声を低くして息を殺して恐ろしそうにしてから私の話を聞いて居るのです。
また、ハーンと節さんは、大層仲が良かったらしいです。
又この時分私は外出したおみやげに、盲法師の琵琶を弾じている博多人形を買って帰りまして、そっと知らぬ顔で、机の上に置きますと、ハーンはそれを見ると直ぐ「やあ、芳一」と云って、待っている人にでも会ったと云う風で大喜びでございました。
ハーンがやってきた頃の日本は、急速に近代化が進み、それまで大切にしてきたことが顧みられなくなっていた時代でした。その中で、異邦人であるハーンが日本の良さに惹かれて、こうして様々な素晴らしい文学作品や評論を遺していたことに感謝します。
投稿者 isi : 2004年09月18日 23:13 | トラックバック